2009年、日本で初めてのStartup Weekendが東京で開催されました。今では日本全国各地でStartup Weekendが開催され、これまで累計15,000人以上が参加。日本最大の起業家コミュニティとして成長を続けています。
Startup Weekend Japanがどのように始まり、成長し、これからどこへ向かうのか。ファシリテーターである李さんに伺いました。
初めてのイベントの準備期間は4日間
アメリカのベンチャーキャピタル500 Startups創業者であるDave McClureが来日するタイミングに合わせて、たった4日間の準備期間で開催された日本で初めてのStartup Weekend。時間がないとの理由からウェブサイトでの告知はほとんどせず、東京都内の起業家たちが集まるイベントで「有名な投資家が来る」とオフラインで告知。すると、知り合いが知り合いを呼び、約40人の参加者が集まったそうです。
李さんも、起業家を対象にしたあるイベント参加中にその告知を聞き、最初のStartup Weekendに参加。当時、李さんは東京で起業しようと、様々な起業家向けイベントに週3〜4回参加し、情報収集をしていたと言います。とはいえ、情報やノウハウを教えてもらっても、それを使えるかどうかは別の話。「名刺ばかりが集まって、何も役に立たない。色んな情報は知っていても、私は何もできなかった。でも、Startup Weekendの2日間で色んなことに気付いたんです。」まずは自分でやってみることで学びや気づきを促すStartup Weekendのやり方に感銘を受けた李さんは、その後、主催者として活動に加わるようになります。
Startup Weekend Tokyo (Day Two): Wrapping it All Up, Derek A., aka iMorpheus
あなたのコミュニティは「たまねぎタイプ」か「チェインメイルタイプ」か
2010年11月、2回目のStartup Weekendが東京で開催。それまでに韓国でも初めてのStartup Weekendを開催し、成功させていた李さんが主催者に加わったことで、イベントの準備や告知、集客もうまくいきました。80人ぐらいの参加者が集まり、今のStartup Weekendと同じような形式で開催できたと言います。Startup Weekendの本当の目的は、イベント開催そのものではなく、イベント開催を通して人を集め、そこに残ってくれた人たちと起業家コミュニティを作ること。Startup Weekendが求めている人に参加してもらうための秘訣を李さんに聞くと、「たまねぎタイプ」と「チェインメイル(くさりかたびら)」の2つのタイプに分かれるというコミュニティ理論を教えてくれました。
「たまねぎタイプ」は、真ん中に中心人物がいて、そこからファンの層が一層目、二層目、三層目と固まっているコミュニティ。中心人物が発する熱量がファンの層を通るたびに薄れるので、小さくて強い塊にはなるけれど、大きなサイズにはなれない。小規模な同好会や友達グループに適していて、ビジネスには向いていないそうです。
一方、「チェインメイル(くさりかたびら)タイプ」は、真ん中に中心人物がいるのは同じですが、ファンの層が二層目ぐらいまでで区切られます。その後、中心人物と二層目ぐらいまでのファンの間で教育が行われることで、ファンの中から第二の中心人物が生まれます。そして、それが繰り返されることでコミュニティが勝手に大きくなる上、中心人物同士はお互いに強く繋がっているので熱量も下がらない。こういうコミュニティこそがビジネスに向いているのだそう。
Startup Weekendが「チェインメイルタイプ」コミュニティになるためには、その中心人物(インフルエンサー)となる人が重要で、その人たちがイベントに来てくれるようにマーケティングする必要がありました。一般的に、中心人物になれる人は100人に10人ぐらいしかいないと言われています。東京近辺に存在する起業家は約3,000人、そのうちの1割、つまり300人に対して李さんは働きかける告知を試みたと言います。
こうすればインフルエンサーはイベントに来る
「簡単に言うと、適当な言い方をすれば来るんです、そういう人は。」と李さんは言いますが、どういうことでしょうか? 「ちゃんと説明して、安全ですよ。有名ですよ。という言い方をすると、インフルエンサーは逃げて、その他大勢の人が来ます。危うくて、なんか意味がわからない。という時こそインフルエンサーは動くけれど、その他大勢の人は怖くて来れないんです。」 この原理を使って、インフルエンサーを動かし、イベントに来てもらうということが最初にコミュニティを作る時の基本なのだそうです。そこで、Startup Weekend Tokyoの2回目のイベントでは、「一緒に起業しましょう」という単純なメッセージだけで告知するようにしたところ、1回目を上回る数の参加者が募りました。また、後に起業した参加者の割合も非常に高かったことから、ターゲットであったインフルエンサーとなりうる人が大勢参加していたことがわかります。
日本全国にStartup Weekendが広がった理由
このようなマーケティングの成果もあって、日本全国にStartup Weekendコミュニティは広がり、今では毎週一回、東京に限らず日本のどこかでイベントを開催。年間約2000人がイベントに参加するほどまでにスケールアップしています。Startup Weekendを開催する各地の主催者たちはどのように増えていったのでしょうか。
「各地のStartup Weekend主催者は、私たちのお客さんだと思っています。お客さんがStartup Weekendを買いたいと言ってくれれば買ってくれればいいんです。もちろん、コミュニティの中心人物になれる人がお客さんであるべきで、そういう人が色々な都市で見つかり、彼らを中心に人が集まっている状況ができてきたんだと思います。」と李さん。主催者になるための条件は一つだけで、自分でStartup Weekendの3日間のイベントに参加すること。3日間参加した人だけが、Startup Weekendの主催者になれるので、参加者の中から「私、やりたいです」という申し出もあるそうです。
こうして順調に、着実にスケールアップしてきましたが、その中で見えてきた課題もあります。Startup Weekendは、NPOとして非営利で運営されています。今、年間約50回のイベントが各地で開催される中、李さんをはじめとする本部メンバーが抱える仕事量は膨大。今後さらに活動が広がることでその量は増え続けます。また、各地の主催者はボランティアです。長く続けてくれる人もいるけれど、いつ辞められるかわからないボランティアをベースに全国規模で活動しようとすると、5年計画などの長期計画を立てるのがとても難しいそうです。「日本をもっと起業しやすい国にしたい」「起業家が過ごしやすい国にしたい」という大きな夢を持ち、日本を変えようと活動するStartup Weekendにとって、長期的な活動やスケールアップは必要。けれど、NPOであるということが邪魔になるという根本的な問題にぶつかってしまうのです。今後のStartup Weekendコミュニティの成長のためには、この問題を乗り越えていく必要があるのだそうです。
Doorkeeperは単なるチケット販売ツールではない
年間2000人、累計15,000人の人がStartup Weekendに参加しているという数字は、Doorkeeperがなかったら数えられなかった、と李さんは言います。各地で主催者をしてくれるボランティアの人が辞めてしまっても、Doorkeeper上で数字は残り、新しい主催者が見つかればコミュニティは継続できます。また、立ち上げ時から現在に至るまでのコミュニティ成長の経緯もわかり、助かっているそうです。「Doorkeeperとは創業期がほぼ同じだったから、いいシナジー効果を生みながら、お互いに成長できた」と李さんは言います。Startup WeekendがDoorkeeperを使うことで、IT系の人に対してDoorkeeperのブランディングができ、そのような人がDoorkeeperにどんどん集まることでStartup Weekendもより大きくなれるという良い循環があって、お互いに役に立てたと感じているそうです。
そんな李さんから、これからDoorkeeperを使うイベント主催者に「Doorkeeperを単なるチケット販売ツールというふうに見ないでほしい」というメッセージが。コミュニティを作ろうとするとその時々にフェーズが発生します。コミュニティを立ち上げたばかりの時、ある程度大きくなった時、Startup Weekendのように全国規模のコミュニティにまで成長した時。コミュニティの成長過程で出てくる様々なフェーズに応じた役割を、「コミュニティサポートシステム」であるDoorkeeperにお願いすることで、いいシナジーが生まれると言います。
「Doorkeeperとコミュニティの間でwin-winの関係を築き上げることが大事だということを、これからコミュニティを立ち上げようという主催者に知ってもらいたいし、それが正しいDoorkeeperの使い方だと思う。」約10年にわたってDoorkeeperを使い、Startup Weekendコミュニティを日本最大の起業家コミュニティにまで成長させてきた李さん自身、今後もDoorkeeperを活用して、Startup Weekendを年間20万人が参加するコミュニティに成長させたいと考えているそうです。
自分が作りたいコミュニティのタイプを知り、インフルエンサーを集めて最適なマーケティング方法を見極め、実行する。Startup Weekendに続いて、日本各地に広がろうとするコミュニティをDoorkeeperは応援しています。李さんのお話を、ぜひ今後のコミュニティ運営に生かしてくださいね!